ワニがまわる タムラサトル 国立新美術館 企画展示室1E(東京) 2022.6.15 – 7.18 「ワニがまわる タムラサトル」展 2022年 国立新美術館展示風景 撮影:金田幸三 展示作品 2009.04.29 スピンクロコダイル・ガーデン Spin Crocodile・Garden 2009- スピンクロコダイル Spin Crocodile 1994-制作 / 5000 x 5000 x 2500 mm / ウレタン、鉄、モータ、etc スピンクロコダイル… 開館15周年という記念の年に、現代美術家・タムラサトルの個展を開催します。代表作「まわるワニ」のカラフルな彫刻を、約12メートルの巨大なワニを中心に、大型インスタレーション作品として展開します。ユーモアに満ちたタムラの作品は、既成の価値観を揺さぶり、「アートとは何か」という問いについて考えさせてくれます。また、作家の自由で豊かな想像力に触れることで、アートを身近に感じ、子どもから大人まで楽しんでいただける展覧会です。 (ワニがまわる タムラサトル|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO より) 「ワニがまわる タムラサトル」記録集より 「ワニがまわる」の裏側について 国立新美術館の企画展示室で開催されたタムラサトルの「ワニがまわる」展では、会場を埋めつくす1000匹ものワニがまわることで、ニュースでも話題になっていた。さらに12メートルもの超巨大なワニもゆっくりとまわっている。 ワニがまわる理由を聞かないでほしい、というけれど、見る側からはやっぱり気になって仕方がないので、そのことについて書いてみたいと思う。 同展の解説文でも明かされているが、ワニをまわすきっかけは大学時代の課題作品からだったという。「電気を使った芸術装置」というテーマで、タムラサトルに突然ワニがやってきた。彼はそれ以来ワニをまわす作品を作り続けている。 しかし、ワニを思いついたのと、まわすのは別次元の話だ。電気を使うのが苦手だったから単純にまわしたというが、そのために必要なモーターがすぐに入手できたから、そういう発想になったのではないか。そこにツクバの特殊事情がある。筆者も筑波大学芸術専門学群出身なので、そのあたりの背景について説明していきたいと思う。 東京教育大学が筑波へ移転したとき「総合造形」という新課程が生まれた。それを主導したのが実験工房から大阪万博などで活躍した山口勝弘で、戦後のアート&テクノロジーを代表する人物だ。また金属彫刻で注目される篠田守男、河口龍夫、三田村畯右の教授陣でスタートしている。 「総合造形」では、メディア時代に対応した新課程カリキュラムがあった。インスタレーション、パフォーマンス、ビデオアート、ホログラフィなど、現代アートの新カテゴリーを大学カリキュラムに取りいれたのは筑波大学が最も早く、新設大学だから実現したことである。そのために文部省(当時)の新分野への理解が追いつかず、それぞれ「展示造形」「身体造形」「電子画像」「立体画像」という和文名に変換して、かろうじて認可されたというエピソードを持つ。この環境のなかでタムラはキネティック・アートを自然に身につけてゆくことになる。だから、普通の美術大学では、モーターがその辺に転がっているわけがないが、当時のツクバではそれは別段めずらしいことではなかった。 数年前に横浜のBankArtで開催された「心ある機械たち」展では、当然のことながらタムラサトル作品も出展されていた。タムラが作りだす“心ある機械“は、篠田守男譲りの機械の美学に関心を示した結果であると考えるのは、違っているだろうか。 ツクバ系のもうひとつの脈流として、第一期生の石原恒和(ポケモン)、メディアアーティストの岩井俊雄(ウゴウゴルーガ)、森脇裕之(小林幸子電飾衣裳)そして明和電機(オタマトーン)など、エンターテイメントへの進出にも注目すべき点がある。タムラの持っているシニカルなユーモアセンスも、この流れの影響下にあったのではないかと思われる。土佐信道は、旧来の美術館制度のなかでアートをやることのカウンター行為が、明和電機の原点と口にするが、1980年代から1990年代にかけては各種の問題点が表面化して、美術館自体も変革期にあった。しかし、われわれはエンターテイメントに関わったとたんに視聴率、動員数、売り上げなどの消費文化に翻弄され、アートとエンターテイメントのあいだを彷徨うことになってしまった。タムラサトルの場合は、現代アートのなかでアートの本質を問うコンセプチュアルな側面をつよく通すことで評価を不動のものにしてきた。 今回の展覧会で彼が、自分の出発点として原点回帰を定めたところを、たいへんうれしく思った。学生時代の課題作品への個人的な想いという点では、非常に共感できるからだ。学生時代のやたら空回りする情熱は、それはそれで悪くないと思う。展覧会会場でお会いしたとき「学生時代から、あいも変わらずワニをまわしていますよ」と自嘲気味に語ったけれど、むしろそれは、いいことなのである。 2022年9月 多摩美術大学情報デザイン学科教授 森脇裕之 TOKYO マシーン Enlightenment アートの光 ― 現代アーティストによる四つの光の空間 最近の展覧会展覧会一覧 タムラサトル 開放的な接点 発電所にて電力を浪費する レイという青いワニはまわるのに60秒かかる ジョージという白いワニはまわるのに30秒かかる ぐるぐるまわってみる 前橋マシーン HELLO, YES & NO マシーン 第10回「10×15の世界コンテスト」特別展示